SSブログ

DATが消える [音楽配信]

(DAT)レコーダー『TCD-D100』出荷終了のお知らせ(ソニー)

 多くの人には、まずDATとはなんぞやという事から説明せねばなるまい。

 ここでいうDAT(オーディオ用DAT)とは、デジタル・オーディオ・テープ(Digital Audio Tape)の略で、もの凄く大雑把に言うと非常に音の良いデジタルカセットテープだと思って貰ってよい。通常のカセットテープやMDのようにカートリッジ式のテープで録音や再生が行える。当然テープメディアであるので頭出しなどはMDやCDのようには一瞬で行うことはできない。

 DATは業務用としては音楽CDのマスター音源として使われており、今も現役のメディアだ。今でこそパソコンを使ったハードディスクレコーディングは当たり前となっているが、それはまだここ5年くらいの話だ。また一部のオーディオ愛好家や宅録用途などで民生用でもDATはポータブル機を中心に売れていた。ただ、DATが国内でブレイクしようとしたときに著作権の問題で揉めたことと、その後MDが出始めてしまったことにより民生用のポータブル機はあまり売れなかった。売れないから値段も下がらず値段が高いからますます売れないという状況が続き、生産メーカーは一社減り、二社減り、現在は実質ソニーのTCD-D100が残っているだけだった。

 かく言う私はと言うと、これの数世代前のTCD-D7という機種を持っており、ほんの2年前まで使っていた(2年前に乾電池が液漏れを起こして使えなくなってしまった)。TCD-D7は当時としては画期的な機種で500gの軽量化(笑)を実現。前機種の倍となるバッテリーの保ちで4時間の録音が出来た。

 肝心の音質はというと、ちょっと良いマイクを付けてやると今売られているICレコーダーはもちろんのこと、MDとは段違いの音質で録音できた。オーディオ的に言うと定位感や解像度にすぐれ、ダイナミックレンジもひろい。空気感まできちんと記録できる民生用の機材というのは、今ですらなかなかないのではないか。

 ちなみに出荷終了になったTCD-D100が発売されたのは97年のことだ。なんと8年前である。

 今思えばこのDATも著作権によって人生をくじかれ凋落した被害者である。DATはCDのマスター音源として使用できるほど、優れた録音再生品質を持ったメディアである。従ってこのDATによってCDが無制限にコピーされてしまうとおそれた音楽業界が反発、音楽CDならぬ音楽DATは全く発売されず、それどころかDATレコーダーを発売するにあたって制限を要求した。その制限は一度CDを通常のカセットテープなどにアナログでレコーディングしてからでないと録音できないようにするというものだ。それで折り合いが付いたかと思ったら今度は我らがヒーロー、著作権を守るために日夜頑張っておられるJASRACが待ったをかけた。これによって結局2年もかかりSCMSという機構と、著作料の二度取りである賦課金制度によってゴーサインがでた。SCMSとは

  • デジタル録音したものから、さらに他のデジタルオーディオ機器 (MD や DAT デッキなど) へのデジタル録音はできません (2 世代目のデジタルコピーの禁止)。
  • アナログ録音したものは、他のデジタルオーディオ機器へ 1 度だけデジタル録音できます。

 というもので、実際もの凄く使いづらいものだ。

 ゴーサインはでたは良いが、この頃には既に音質の悪いMDが産声を上げ始めており、結局は今のような状態となってしまった。

 著作権もよいがそれが元で一つの音楽文化が無くなって良いのだろうか、と言うようなことを書くつもりではなかったのだが・・・。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(2) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 2

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。